大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和50年(ネ)1082号 判決 1976年2月06日

控訴人

日動火災海上保険株式会社

右代表者

久保虎二郎

右訴訟代理人

吉本範彦

外二名

被控訴人

春名ナツ

右訴訟代理人

前田知克

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所の判断は、次に付加・訂正するほか、原判決理由説示のとおりである。

1  原判決八枚目表一行目を「徳市が本件自動車を所有し自己のため運行の用に供していたことは、争いがない。」と、同一四枚目表一〇行目の「五六二万」を「五一二万」と各改める。

2  控訴人の当審主張について。

徳市個人が亡五男を含む三名の子及び約六名の職人を使用して左官工事の下請負業を営んでいたものである(原判決理由二・(一))。控訴人の主張はいずれも前提を異にした立論であつて採用できない。

3  原判決理由二・(二)を次のとおり改める。

本件のように、運行供用者父の自動車を第三者が運転中の交通事故により子を死亡させたとき、死者の母(運行供用者の妻)は、積極的財産損害のみでなく、消極的財産損害及び慰藉料についても、自賠法一六条一項による被害者請求をなしうると解するのが相当である。最高裁判所昭和四七年五月三〇日第三小法廷判決、民集二六巻四号八九八頁は、夫が運転する自動車に同乗中負傷した妻の積極的財産損害について自賠法一六条一項による被害者請求を認容した原判決の結論を是認した判決であるが、その判決理由の論理は、消極的財産損害及び慰藉料についても被害者請求を肯定するものと解しうる。

二よつて、原判決は結局正当であるから、本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担について民訴法九五条・八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(小西勝 入江教夫 和田功)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例